HubSpotの導入事例から学べるのは、顧客情報をまとめる方法だけではありません。ハーモは営業の知見をWebでの接点づくりへ展開し、ピー・シー・エーはマーケティングと営業の受渡しを改善しました。電算システムは、ブログ・メール・セミナーに分散していた作業を整理し、担当者が交代しても続けられる運用へつなげています。
自社への導入を考えるときは、成果の数字とともに、その成果につながる活動を誰が続けたのかを見ることが大切です。本記事では、実在する3社の課題・活用方法・運用体制を整理し、自社の準備事項へ落とし込む方法を説明します。各社の成果は、それぞれの導入当時から取材時点までの取り組みに関するものです。
HubSpotの導入事例を課題・活用・体制・成果で読み解く

まずは、自社と似た課題を持つ事例を探してみましょう。新しい見込み客との接点が足りないのか、獲得した情報を営業へ渡せていないのか、日々の作業が分散しているのかによって、着目する取り組みが変わります。
課題から選ぶHubSpot導入事例
| 企業 | 導入前の課題 | 主な業務変更 |
|---|---|---|
| ハーモ | 紹介を中心とした営業から、新たな顧客接点を増やしたい | 営業の知見をWebコンテンツへ展開し、セミナーやメールと営業フォローを接続 |
| ピー・シー・エー | MAと商談管理が分かれ、資料送付後の対応を把握しにくい | 顧客履歴を共有し、営業へ渡す見込み客の優先度と対応結果を継続的に確認 |
| 電算システム | ブログ・メール・セミナーの管理と担当スキルが分散している | サイトや配信業務を段階的にまとめ、履歴を使って運用を引き継ぐ |
事例を理解するために、用語も整理しておきます。CRMは、顧客情報や対応履歴を管理し、顧客との関係を継続していくための考え方や仕組みです。MAはマーケティングオートメーションの略で、見込み客へのメール配信など、継続的な働きかけを支える仕組みを指します。CMSはWebサイトの内容を作成・更新・管理する仕組みです。
3社の取り組みでは、これらの仕組みと担当者の仕事が結び付いています。情報を登録する人、関心を判断する人、実際に連絡する人がつながって初めて、蓄積した情報を次の行動へ使えます。機能・担当者の活動・営業との連携を一緒に読むと、自社に必要な準備が見えてきます。
成果についても、資料ダウンロード、問い合わせ、商談、受注はそれぞれ異なる行動です。どの行動を、いつからいつまで数えたのかを確認しましょう。たとえば、資料を受け取る人が増えても、営業が対応する体制が追い付かなければ、商談へ進むとは限りません。各社が途中で何を見直したかに、運用を考える手掛かりがあります。
ハーモ:営業の型をWebで展開し見込み客を育てる

提案型営業の知見を、新しい顧客接点へ広げた
ハーモでは、従来、メーカーや商社からの紹介を中心に営業活動を行っていました。新規案件を増やす課題に対し、HubSpot導入以前から、顧客の困りごとを起点とする提案型営業の育成を進めていました。一方、紙のDMでは開封や反応を把握しにくく、施策を評価する難しさがありました。
そこでWebマーケティングへ取り組む際に重視したのが、すでに社内にあった「営業の型」です。営業担当者へのヒアリングから、粒断機を入口に顧客との接点を作り、取り出しロボットの提案へつなげる流れを整理しました。そのうえで、営業活動に特化したマーケティングサイトを構築しています。
サイトでは顧客の課題解決につながるコンテンツを用意し、サンプルカットの申し込みを接点にしました。さらに、顧客の困りごとを扱うWebセミナーを毎月開催し、その内容をダウンロード資料として設置。蓄積した見込み客へメールで案内し、営業担当者からの個別の声掛けも組み合わせました。
この流れから考えられるのは、営業が現場で説明している内容を、Webでも相談へ進める形にするという使い方です。製品情報を掲載するだけでなく、顧客が何に困ったときに読み、次に何を申し込めばよいかまでつなげることがポイントになります。
コンテンツと案件フォローを支えた役割分担
| 担当 | 事例での主な役割 |
|---|---|
| 社内の推進担当者 | 顧客の課題やコンテンツのテーマを整理し、セミナーと社内への活動説明を継続 |
| 外部支援者 | 営業へのヒアリングを基に、Webでの構成・打ち出し方・サイト構築を支援 |
| 営業担当者 | 顧客へセミナーを個別案内し、困りごとを聞く接点として活用 |
| 営業本部長 | HubSpot上で案件フォローを割り振り、社内での利用定着を後押し |
新しい活動に対して、営業所長たちの反応が当初から好意的だったわけではありません。それでも推進担当者はセミナーを継続し、営業所長が集まる会議で活動と成果を説明しました。責任者も案件フォローへ関与したことで、Webで得た接点を営業活動へ取り入れる環境を整えています。
成果の数字と、応用するときの条件
2021年12月時点で、資料ダウンロードは300本を超えたと報告されています。また、初年度の活動は約3,000万円の売上に貢献し、粒断機の受注台数が過去最高になったとされています。Webで生まれた新規見込み客は、従来のコーポレートサイトへの年間問い合わせと比較して約3倍という報告です。ここでは、新規見込み客と従来の問い合わせを比較している点も含めて読む必要があります。
これらは、営業育成、コンテンツ制作、セミナー開催、個別フォローを重ねた取り組みの成果です。自社へ応用するなら、まず営業に「顧客から繰り返し聞かれる困りごと」を確認しましょう。その課題を説明する資料と、相談しやすい申し込みの入口を用意し、申し込み後の対応担当者まで決めると、Webと営業を一続きの業務として設計できます。
ピー・シー・エー:マーケティングと営業の連携を整える

情報の一元化とともに、営業へ渡す基準を見直した
ピー・シー・エーでは、マーケティング側がMAを利用し、インサイドセールス側がExcelで商談を管理していました。資料請求後のフォロー状況を把握しにくいことも課題でした。インサイドセールス組織がCXセンターとして独立する組織改編をきっかけに、部門間で顧客情報を共有する必要性が高まり、2020年12月にHubSpotを導入しています。
導入初期は、電子カタログのダウンロードや体験版の申し込みなどを、見込み客を把握する接点に設定しました。しかし、獲得件数を重視して営業へ渡す人数を増やすと、CXセンターが対応できる量を超え、電話がつながらないケースも多いと分かりました。そこで、獲得量を増やす方針から、対応する相手の質と優先度を見極める方針へ変えています。
具体的には、コンバージョンまでのWeb上の行動履歴や顧客の区分を確認し、情報収集を目的とする人と、製品への関心がある人を見極めました。さらに、別システムの企業規模や販売代理店の販売履歴も照合し、毎週CXセンターへ見込み客を渡す運用を行っています。対応結果をマーケティングへ戻し、次の見極めにも使いました。
ここでの要点は、営業へ渡す条件と、対応結果を戻す流れを決めることです。共通の情報基盤があっても、誰を優先するかの認識が違えば、営業にとって使いやすい情報にはなりません。営業の対応能力と、顧客が求める情報の両方を踏まえて運用を調整する必要があります。
自社で使える引継ぎメモの記入例
たとえば、資料請求後の対応を引き継ぐ場合は、次のようなメモを残す方法があります。顧客の発言と、担当者が判断した内容を分けると、次の担当者が判断の理由を追いやすくなります。
| 記入項目 | 資料請求後の引継ぎ記入例 |
|---|---|
| 資料請求の目的 | フォームに「営業部門で顧客情報を共有したい」と記入されている |
| 確認できた関心 | 共有の方法を知りたい意向がある。導入時期や必要な連携先はこれから確認する |
| 営業へ渡す理由 | 具体的な業務課題が書かれているため、現状と希望する運用を聞く担当へ引き継ぐ |
| 対応結果 | 面談で確認した課題、次回の連絡予定、継続案内の希望を記録する |
この記入例なら、営業は資料請求の事実だけでなく、何を聞くために連絡するのかを理解できます。マーケティング側も、実際の相談内容を受け取り、案内する資料や次の対象選定を見直せます。閲覧や開封などの反応を使う場合も、本人の発言と合わせて関心を確かめることが大切です。
MRRの成長を、部門連携の取り組みと読む
導入から約2年後の報告では、クラウドモデルのMRRが導入前の5倍以上になったとされています。MRRは月次経常収益で、毎月継続して得られる収益を表す指標です。この成果はクラウドモデルを対象としたもので、会社全体の総売上とは対象が異なります。
その背景では、顧客履歴の共有に加え、優先度の見極め、対応タイミングの工夫、顧客像の見直しなどが進められています。自社で取り入れるなら、営業へ渡す件数だけでなく、連絡できた件数、商談につながった件数、見送った理由も確認しましょう。毎回同じ条件で結果を返すことで、獲得施策と営業対応の双方を改善しやすくなります。
電算システム:分散した作業をまとめ継続運用へつなぐ

社内の担当を配置し、段階的に活用を広げた
電算システムでは、営業がセミナーや既存顧客への案内などの集客も担っていました。案件対応が忙しくなる中、全国から効率よく見込み客を増やす必要がありました。一方、ブログ・メール・セミナーでは異なるツールを使っており、担当者の得意分野も分かれていました。
2014年1月の導入に当たっては、社内のリーダーを決め、別部門のデザイナーも配置しました。外部支援を受けながら、顧客像や戦略を整理し、基本操作を学んでいます。その後は自分たちでも手を動かし、まずサイトのリニューアルを進め、そこからマーケティングの活用を広げました。
この事例は、少人数の運用を考えるときの参考になります。すべてを同時に作り替えるのではなく、最初に整える業務を決め、必要なスキルを持つ人を組み合わせています。作業をまとめる範囲と、更新を続ける担当者を一緒に決めることが、継続運用の土台になります。
サイト・フォーム・配信の作業はどう変わったか
| 従来の作業 | 変更後の運用 |
|---|---|
| サイトやブログを別々に管理 | サイトを改修し、ブログを移行。問い合わせへ進む案内の位置も改善 |
| フォームの集計を手作業で実施 | 用意されたフォームを応用し、入力項目やメインフォームを定期的に見直す |
| Excelで配信リストを結合・抽出して再取り込み | メール配信に関する管理をまとめ、ステップメールの活用へ展開 |
| 担当者ごとに知識や得意分野が分散 | 社内リーダーとデザイナーが運用を学び、交代後も履歴を参照して継続 |
サイトの見た目を変えるだけでなく、問い合わせにつながる案内や入力項目を見直した点も重要です。さらに、記事制作では社内の知見を基にしながら外部の支援も活用し、制作を続ける方法を調整しています。担当交代後も履歴を確認して運用できたことは、情報を共有できる形で残す価値を示しています。
コンバージョンの成果と、自社で残したい履歴
2019年更新の取材では、導入後3〜6か月ほどで、300〜400件程度のコンバージョンを得られるようになったと報告されています。コンバージョンは、問い合わせや申し込みなど、設定した目標行動を指します。事例の数字を自社の計画へ使う際は、対象となる行動と集計期間をそろえることが必要です。
自社で運用をまとめる場合は、「顧客情報をどこへ移すか」に加えて、「移した後、誰が何を更新するか」を整理しましょう。たとえば、配信の希望、最後に送った案内、問い合わせ内容、次の対応予定を引き継げると、後任者が経緯を確認しやすくなります。重複登録の扱いや、配信対象から外す条件も、日々の作業を担当する人と合わせて決めておくとよいでしょう。
事例を自社へ当てはめるときに比べたい条件

業種が同じ事例は、顧客の困りごとや商材の説明を想像しやすいものです。さらに商談期間、顧客接点、保有データ、担当体制も比べると、取り入れるべき業務変更を判断しやすくなります。同じ資料請求でも、すぐに商談したい人と、数か月先に向けて情報を集める人では、必要な案内が変わります。
ハーモからは、営業知見をWebの接点へ変える方法を学べます。ピー・シー・エーからは、営業へ渡す条件と結果を戻す運用を、電算システムからは、作業をまとめて継続する体制を学べます。自社の詰まっている箇所を見つけ、そこに近い取り組みから検討しましょう。
自社の条件を書き出す確認票
| 確認項目 | 自社で記入する内容 |
|---|---|
| 解決したい課題 | 接点の不足、資料請求後の対応停滞、情報の分散など、改善したい状態 |
| 顧客接点と商談期間 | 問い合わせ・資料請求・セミナーなどの入口と、相談から受注までの期間 |
| 保有データと保存先 | 顧客情報、接点の履歴、商談情報がある場所と、移行する範囲 |
| 受渡し条件と担当者 | どの状態の見込み客を、誰が確認し、誰へ渡すか |
| 対応結果の戻し先 | 営業が残す結果と理由、それを確認して施策を見直す担当者 |
| 評価指標と期間 | 数える行動、集計対象、比較する期間、見直す会議の時期 |
たとえば、資料請求は届いているのに対応が止まっている場合を考えます。担当部署へ通知するだけでは、連絡する人が決まらず、確認したつもりのまま残ることがあります。この場合、最初に決めたいのは「誰が内容を確認し、どの条件なら営業へ渡し、いつまでに対応するか」です。
そのうえで、渡す情報と、営業が返す結果を決めます。連絡できなかった相手、情報収集を続けたい相手、具体的な相談へ進む相手を分ければ、その後の案内も考えやすくなります。受渡しのルールを決めてから、必要な共有や自動化を選ぶ順番にすると、作るべき仕組みが明確になります。
導入前と運用後で、確認の優先度を分ける
| 優先度 | 確認すること | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 最優先 | 目的・責任者・引継ぎ条件 | 改善する業務と、次に動く担当者を説明できる |
| 導入前に確認 | 移行データ・評価方法 | 移す情報、管理方法、成果を数える条件が決まっている |
| 運用後に検討 | 配信や連携の範囲拡張 | 現在の運用結果を見て、追加する目的と担当工数を判断できる |
成果指標は、自社の課題に合わせて選びます。接点が不足しているなら新規見込み客数、受渡しに課題があるなら対応できた件数や商談数、継続課金の事業ならMRRなどが検討対象になります。作業をまとめることが目的なら、リストを結合する時間や引継ぎ時の確認作業も評価できます。
たとえば商談数が増えても、獲得施策、営業人数、対象顧客が同時に変わっていれば、それぞれの影響を考える必要があります。導入前の状態と変更した業務を記録し、どこまで運用でき、どこで止まったかを確かめましょう。成果の数字と活動内容を結び付けて評価することで、次に改善する箇所を選びやすくなります。
導入の目的と担当体制を決めて必要な支援を選ぶ

導入事例を自社の計画へ変えるには、条件票を基に、対象業務を絞って運用を確かめます。たとえば、特定の資料請求から営業への引継ぎまでを対象にし、情報が正しく届くか、担当者が対応できるか、結果が戻るかを確認します。商談まで時間がかかる場合は、途中の対応状況も見ながら、受注を評価する時期を設定しましょう。
開始前には、実際に使う情報の項目と保存先を照合し、重複や不足がないか確認します。運用担当者には、入力する理由と、その情報を次に誰が使うかまで共有します。入力項目を増やす場合も、使い道を説明できる項目から選ぶと、日々の業務へ取り入れやすくなります。
社内の判断と、支援を検討する作業を整理する
| 社内で決めること | 支援を検討する作業 |
|---|---|
| 顧客の課題と、改善したい業務 | 目的に合うツールや構成の選定、必要な機能の整理 |
| 営業へ渡す条件と責任者 | 条件に沿った設定構築、情報共有と運用の整備 |
| 使う顧客情報と更新する担当者 | データ連携と自動化の設計、継続して扱える運用の整理 |
| 目標行動と評価する期間 | 流入経路やコンバージョンを分析するための整備 |
相談時には、実現したい業務を短い文章で伝えると、必要な支援範囲を検討しやすくなります。たとえば「資料請求後のフォローを整えたい。顧客情報は複数の場所にあり、営業結果をマーケティングへ戻せていない」とまとめれば、受渡しのルール、情報の整理、連携、評価方法を順に確認できます。
担当者が足りない場合も、どの作業に時間を使えていないかを具体化しましょう。テーマを決める人がいないのか、設定を進められないのか、対応結果を振り返る時間がないのかによって、必要な支援は変わります。社内に残す判断と、支援を受けたい作業を明確にすることが、相談後の認識違いを減らすために役立ちます。
ハーモの接点づくり、ピー・シー・エーの部門連携、電算システムの継続運用には、それぞれ異なる工夫があります。自社の課題に近い取り組みを選び、目的・データ・担当者・評価方法を書き出してみてください。整理した内容を基に、選定や設定構築、データ連携、運用のどこに支援が必要かを検討できます。トミラへの相談を検討する際は、以下から支援内容を確認し、資料請求へ進めます。
トミラ Hubspot導入構築支援・運用代行

株式会社トミラが提供するHubSpotの導入・構築・運用支援サービスです。顧客管理やマーケティングオートメーションに精通したHubSpot設定構築のプロフェッショナルの再現性のあるサポート・施策で、顧客管理の最適化による顧客満足度やLTVの向上、コスト削減が見込めます。
コンサルティング支援から、ツール導入支援、データ連携による自動化、シナリオ(ステップ)配信、メッセージクリエイティブの制作、流入経路分析、CMSを活用したサイト制作など、多岐にわたってサービスを展開しています。
シナリオ作成においては、簡易的なフローではなく、多様なコミュニケーションフローの構築まで可能です。また、外部のIPaaSを活用したデータ連携によって、業務の自動化を促進します。
トミラのHubSpot構築支援は、WEBマーケティングや営業企画経験者がプロデュースすることで、システムありきではなく現場に求められる活用方法を導入することが可能です。各部署に求められる、リード構築から顧客獲得といったゴール最大化に寄り添います。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
サービス名 | トミラ Hubspot導入構築支援・運用代行 |
会社名 | 株式会社トミラ / Tomira.Inc |
住所 | 東京都港区北青山2丁目12-8 BIZ SMART235 |
事業内容 | ・AI事業 |


