CRMの活用事例には、問い合わせで得た情報を接客の準備に使う取り組みと、購買データから購入後のフォローを組み立てる取り組みがあります。共通するのは、顧客との関係のどこに課題があるかを見極め、必要な情報を使って対応を変えていることです。
この記事では、阪急阪神不動産のフォーム見直しと、アルペンローゼの購入後フォローを取り上げます。課題・使った情報・施策・結果を比較し、自社で試すためのデータ整備、担当分担、検証方法まで解説します。事例の業種や成果だけでなく、自社でも実行できる条件を確認していきましょう。
CRMの事例は課題・データ・施策・結果をそろえて読む

CRMは、顧客の情報や対応履歴を活用し、継続的な関係を築くための考え方です。その実践を支えるシステムもCRMと呼ばれます。事例を読むときは、導入したツールより先に、顧客にどのような不便や情報不足があり、それをどう解消したかを確認すると、施策の意味をつかめます。
今回の2社では、改善したい場面が異なります。阪急阪神不動産は問い合わせ後の提案準備、アルペンローゼはECでの初回購入後のコミュニケーションです。前者は相談時の情報を増やして接客へ渡し、後者は購買情報から顧客の段階を捉えて案内を変えています。
成果を比べる前に、課題と評価する対象をそろえることが大切です。問い合わせ件数の増加を目的とする施策と、問い合わせ後の提案を充実させる施策では、同じ件数の変化でも評価が変わります。メールのクリックと購入も、別の行動として扱う必要があります。
CRM活用事例の比較表
| 比較項目 | 阪急阪神不動産 | アルペンローゼ |
|---|---|---|
| 課題 | 相談情報が少なく、提案を事前に準備しにくい | ECでも店頭に近い購入後の接客を届けたい |
| 使った情報 | フォームの項目別入力率、営業に必要な情報 | ECの購買データ、購入回数や商品の特徴 |
| 施策 | 必須項目の見直しと回答に応じた設問の出し分け | 計4通のメールとリフィル・ボトルのセット販売 |
| 当時の結果 | 問い合わせは若干減少。希望に合う物件の事前準備が可能に | メールから購入が発生。セット商品は2カ月で完売 |
| 自社で必要な条件 | 接客に使う情報と、担当者へ渡す方法が決まっている | 購入段階を識別でき、案内内容と結果を確認できる |
この比較から分かるのは、同じCRMでも、必要な情報と現場で変える行動が異なることです。自社の相談対応に問題があるなら、まず情報の取得と引継ぎを見ます。購入後の関係に課題があるなら、顧客の購入段階と届ける内容を見ます。成果の数字が大きい事例から手段だけを移すより、課題が近い事例から条件を学ぶ方が、実施内容を決めやすくなります。
CRMの基本や導入時の準備を確認したい場合は、顧客情報の一元管理と入力ルールも併せて押さえておくと、事例とのつながりが分かります。
阪急阪神不動産の事例:問い合わせの量から接客の質を見直す

阪急阪神不動産の取り組みは、2016年1月取材の事例です。中古住宅のリノベーションサービスで、2015年10月に問い合わせフォームを改修しました。それまでのフォームは項目や必須入力を少なくし、気軽に問い合わせてもらうことを重視していました。
問い合わせは順調に来ていたものの、入力情報が少なく、電話で詳しく聞くまで希望を把握しにくい状態でした。電話番号が任意のため、直接話せない顧客もいました。顧客の要望に合う提案を準備したい営業担当にとっては、受付件数が増えるだけでは解決しない課題があったのです。
入力率と営業の声から設問を見直した
改修では、任意項目の入力率を調べ、同業のフォームを調査するとともに、営業担当者へ接客に必要な情報を聞きました。入力されにくい項目の中に営業上重要な情報があることを確かめ、必須項目や質問の組み立て方を変更しています。
特徴は、相談内容に応じて設問を出し分けた点です。中古住宅を買ってリノベーションする相談では、希望エリアや物件購入予算を尋ねます。一方、自宅や実家のリノベーションでは、物件購入を前提とする質問を表示しません。モデルルーム見学では、希望日時を選べるようにしました。
接客に使う情報を、必要な顧客にだけ尋ねるという設計です。質問を一律に増やす方法とは異なり、顧客の相談内容と、その後に準備する提案を対応させています。
フォーム見直しで確認する項目
| 取得する情報 | 接客での用途 |
|---|---|
| 相談の種類 | 物件購入を伴うかなどを判断し、必要な質問を分ける |
| 希望エリア・物件購入予算 | 中古住宅を購入する相談で、候補物件を事前に準備する |
| 見学希望日時 | モデルルーム見学の調整に使う |
| 連絡先 | 相談後に直接コミュニケーションを取る |
改修後、問い合わせ数は若干減った一方で、営業担当者は面談前に希望条件を把握し、条件に合う物件などを準備できるようになりました。取材時点では、本格的な成果数値の測定はこれからとされています。したがって、この事例の結果は接客準備の改善として読むことが適切です。
自社で試すなら、入力項目の数だけを判断基準にせず、取得した情報が初回対応に使われているかを調べましょう。情報がそろっていても担当者が見られない、確認する時間がないという場合は、フォームより先に引継ぎの仕組みを整える必要があります。
出典:シナジーマーケティング「阪急阪神不動産株式会社」導入事例(2016年1月取材)
アルペンローゼの事例:購買分析から初回購入後の支援を組み立てる

アルペンローゼの取り組みは、2020年12月取材の事例です。ヘアケアブランド「ラ・カスタ」を展開する同社は、直営店で行うカウンセリングに近いコミュニケーションを、ECでも届けたいと考えていました。当時のECシステムのメール機能は一斉配信が中心で、顧客ごとに内容を変えにくいことが課題でした。
CRMの立ち上げでは、購買データを分析して顧客の状態を整理しました。分析から、2回目購入者がその後も購入する傾向や、初回のEC購入でリフィルを選ぶ顧客の特徴を捉え、初回購入から2回目購入への移行に取り組む方針を定めています。
役立つ情報を届けてから商品を提案した
施策は、初回購入者向けの計4通のステップメールと、リフィルと専用ボトルのセット販売です。メールの前半ではブランドの特徴やシャンプーの使い方を伝え、セット商品の案内は後半に配置しました。
この順序には、購入直後の顧客にブランドを理解し、商品を使いこなしてもらうという役割があります。店頭で悩みを聞いてからケア方法や商品を提案する姿勢を、メールの内容と順番へ落とし込んだ取り組みと読めます。単に配信回数を増やした事例として捉えると、この設計上の工夫を見落とします。
当時、ステップメールから購入が発生し、リフィルと専用ボトルのセットは2カ月で完売したと報告されています。セット販売ではECトップページからの導線も変更しており、完売をメールだけの成果と捉えることはできません。
購入後フォローの内容と役割
| 内容 | 購入後フォローでの役割 |
|---|---|
| ブランドの特徴 | 購入したブランドへの理解を深める |
| 商品の使い方 | 使い始めに役立つ知識を届ける |
| セット商品の提案 | 理解や使用を支えた後に、次の選択肢を案内する |
| 毎月の振り返り | 反応と購入を確かめ、次の施策を決める |
同社は毎月の定例会で結果を振り返り、次に取り組む施策を検討していました。配信を設定して終えるのではなく、顧客の反応から内容を見直す運用まで用意していた点も重要です。
なお、店舗とECの顧客データの一括管理は、この取材時点では今後取り組みたい構想として語られています。まずECの購買データから実行できる施策を始めた経緯は、データ統合の完成を待たずに、対象と目的を絞って進める際の判断材料になります。
出典:シナジーマーケティング「アルペンローゼ株式会社」導入事例(2020年12月取材)
事例から自社の課題と施策の候補を選ぶ

自社への応用は、顧客対応のどの場面に困り事があるかを書き出すところから始めます。「CRMで売上を増やす」だけでは、フォームを変えるべきか、購入後の案内を変えるべきかが決まりません。「初回相談で希望を聞き直している」「購入後に同じ使い方の質問が届く」など、観察できる状態へ具体化しましょう。
法人相談で同じ質問を聞き直している場合
たとえば、法人向けサービスの相談を受付担当から営業へ渡すたびに、顧客へ同じ質問をしている場合です。まず、受付記録と営業の聞き取り項目を照合します。相談目的、導入を考えている時期、現在の困り事がすでに記録されているのに使われていなければ、情報の受渡しを直すことが優先です。
記録自体がなければ、初回提案に使う項目を受付で尋ねる方法を検討します。相談目的は用意する資料、導入時期は提案の進め方、困り事は面談で確認する論点に使えます。項目を追加するときは、営業が何に使うかを先に決めましょう。集めた後に用途を考えると、顧客の入力負担だけが増えてしまいます。
生活用品の購入後に使い方の疑問が生じる場合
たとえば、生活用品を初めて買った顧客から、組み立てや手入れの質問が続く場合です。購入商品と問い合わせ内容を確認し、商品に合う使い方や手入れ方法を届ける施策が考えられます。使い始めの支援が必要な段階で、別商品の販売案内を優先する必要はありません。
すでに追加購入した顧客には、未購入者と同じ購入促進の案内を続けず、購入済みの商品を踏まえて内容を変えます。問題への対応が続いている顧客は、先に担当者が状況を確認します。自動配信を設計するときも、購入や問い合わせによって案内を変える条件が必要です。
自社で優先する施策の選び方
| 症状 | 施策候補 | 優先判断 |
|---|---|---|
| 初回相談で聞き直しが多い | 受付項目や引継ぎの改善 | 優先:必要情報がないのか、届いていないのかを確認 |
| 初回購入後の使い方の質問が多い | 購入商品に合う情報提供 | 推奨:実際の質問に答える内容から試す |
| 購入済みの案内が繰り返し届く | 購入履歴と配信対象の見直し | 優先:次の配信前に対象条件を点検 |
顧客の困り事と、実行に必要な条件が確認できた施策から試すと、優先順位を決めやすくなります。複数の課題があっても、最初は対象を限定し、変更前の状態を記録しておきましょう。法人相談なら一つの相談窓口、購入後フォローなら一つの商品群など、担当者が結果を追える範囲に絞る方法があります。
自社の課題、保有データ、実行する担当者を整理しながら支援の必要な範囲を考えたい場合は、CRMの支援内容を確認することから検討を進められます。
データの整備と担当間の受渡しを準備する

施策を動かすためのデータ整備は、使う項目を決めて範囲を絞ると進めやすくなります。法人相談なら相談目的・希望条件・対応履歴、購入後フォローなら顧客を識別する情報・購入日・商品・購入回数・配信停止情報などが候補です。全社の情報を集め切ることを、すべての施策の開始条件にする必要はありません。
顧客と注文の数え方を合わせる
同じ顧客が別のメールアドレスで登録されていたり、注文を取り消した記録が購入として残っていたりすると、初回購入者の抽出が変わります。必要項目の欠損、顧客の重複、更新日、取消や返品の扱いを確認しましょう。名前が同じという理由だけで別人の情報を結び付けず、社内で定めた識別方法を使います。
また、記録が空欄の顧客を「希望なし」や「購入なし」と扱うと、実際とは異なる案内につながります。不明は不明として扱い、施策の対象から外すか、担当者が確認するかを決めます。配信する情報の利用目的や同意状況を確認し、配信停止が次回の対象抽出へ反映されることも確かめてください。
担当と受渡し情報
| 担当間の受渡し | 渡す情報と次の行動 |
|---|---|
| 受付から営業へ | 相談目的・希望条件・対応状況を渡し、営業が面談準備に使う |
| 販売担当から配信担当へ | 商品の使い方・注意点を渡し、案内内容を確認する |
| 配信・顧客対応担当から分析担当へ | 配信結果・購入・問い合わせを渡し、次の対象と内容を見直す |
受渡しでは「誰が、いつ、何を更新するか」まで決めます。たとえば、受付担当が希望条件を登録し、営業担当が面談前に確認して、面談後に提案へ使えた情報と不足項目を残す運用です。これなら、項目が埋まったかだけでなく、現場で役立ったかを振り返れます。
購入後フォローでは、販売担当が説明内容を確認し、配信担当が対象者と停止条件を確認します。問い合わせの対応中に案内が重なることを避けるには、対応履歴の更新と配信対象の見直しをつなぐ必要があります。共有する範囲は業務上必要な情報に絞り、閲覧・編集できる担当者も決めておきましょう。
データの整備と、使った結果を残す運用を一緒に用意することで、次に直すべき箇所が見えてきます。入力項目だけを増やすより、引継ぎから結果の記録まで一巡させることを目指してください。
評価指標と対象期間を決めて小さく検証する

CRM施策は、実施前に対象者・観測期間・指標を決めることで、結果を次の変更へつなげやすくなります。相談施策なら問い合わせ件数に加え、必要情報を取得できたか、聞き直しがあったか、面談準備に使えたかを確認します。購入後フォローならメールのクリックと2回目購入を分けて見ます。
率の分母と観測期間を固定することが、比較の前提です。初回購入から日が浅い顧客と、十分に時間が経った顧客を混ぜると、2回目購入の機会が異なる集団を比べることになります。
検証前に決める条件
| 条件 | 決めておく内容 |
|---|---|
| 対象者 | 初回購入者など、誰を含めるかと顧客の識別方法 |
| 観測期間 | 初回購入日などの起点と、各人を追う期間 |
| 分母と指標 | 購入者数・クリックした人数など、数える単位と計算式 |
| 除外条件 | 取消注文、重複顧客、配信停止などの扱い |
| 担当者 | 抽出・実行・記録・判断を誰が行うか |
| 見直す内容 | 文面、配信時期、情報の受渡しなど、今回検証する変更 |
たとえば、初回購入者100人を対象に、各人の初回購入日から60日間を観測し、その間に20人が2回目購入をした場合、2回目購入率は20÷100×100=20%です。集計日までに60日経っていない顧客は、同じ観測期間を確保した集団と分けて扱います。これは検証方法を考えるための計算例です。
メールを複数回クリックした人をクリック回数で数えるのか、クリックした人数で数えるのかも決めておきます。2回目購入率の分母は初回購入者、クリック率の分母は採用した定義に沿う配信数などとなり、同じ数字として比較できません。指標名だけでなく計算方法を記録すると、担当者が変わっても確認できます。
結果から次に変える内容を選ぶ
クリックが増えても購入が変わらない場合は、メールで伝えた内容と案内先の商品説明が合っているか、購入時に迷う点がないかを確認します。反対に、必要な相談情報は集まっているのに聞き直しが減らない場合は、営業が情報を確認するタイミングや受渡し方法を見直します。
一度に文面、対象、配信時期をすべて変えると、どの変更が結果に関係したかを判断しにくくなります。小さな範囲で一つの仮説を試し、季節、キャンペーン、在庫状況なども記録しましょう。変更前後の数字に差があっても、それだけで施策単独の効果とは決まりません。
観測する人数が少ない場合は、率だけで結論を急がず、実際の件数と顧客の反応も合わせて見ます。購入までの期間が長い商材では、短期のクリックだけで継続・中止を決めず、相談や検討がどう進んだかを追うことも必要です。
CRMの事例を自社に活かすには、似た課題を選び、必要なデータと担当の動きをそろえ、結果を確かめる流れが大切です。まずは試したい課題を一つ選び、現在の対応方法、使えるデータ、改善を担当する人を整理してください。社内で進める範囲と外部支援を使う範囲も、その情報を基に具体化できます。
トミラ CRM構築・導入支援・運用代行

株式会社トミラが提供するCRMの導入・構築・運用支援サービスです。顧客管理やマーケティングオートメーションに精通したプロフェッショナルの再現性のあるサポート・施策で、顧客管理の最適化による顧客満足度やLTVの向上、コスト削減が見込めます。
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| 項目 | 内容 |
|---|---|
サービス名 | トミラ CRM構築・導入支援・運用代行 |
会社名 | 株式会社トミラ / Tomira.Inc |
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