SEO事例を自社に活かすには、成果の大きさに加えて、どの課題に何を行い、どんな条件で変化が起きたかを読むことが大切です。グロービスは潜在読者へ情報を届けるために社内の知見を記事へ結び付け、カオナビは制作の分業と記事からのリード獲得導線に取り組みました。
この記事では、実在する2社の取り組みを課題・施策・成果・条件に分けて解説します。自社の専門家を記事制作に巻き込む場合と、流入を資料請求につなげたい場合の記入例も紹介します。自社の課題と近い部分を見つけ、試す施策と確認する指標を整理してください。
SEO事例は課題・施策・成果・条件をセットで読む

SEOとは、検索する人が求める情報を届け、検索結果から自社サイトを見つけてもらうための取り組みです。ただし、同じ記事制作でも、認知の接点を増やしたい企業と、資料請求を増やしたい企業では設計が変わります。まずは2社が何を解決しようとしたのかを押さえましょう。
| 事例 | 課題と主な施策 | 公表された変化 |
|---|---|---|
| グロービス | 潜在読者との接点づくり。社員の知見と検索意図を結び、社内で執筆・確認・改善を分担。 | 2021年4月の公開1年時点で、ツール導入から約10カ月のPVが約18倍。 |
| カオナビ | 指名検索・広告以外のリード獲得経路と制作効率。社内の構成設計、外部への執筆依頼、記事からの導線改善。 | 人事用語集の月間PVが2017年の約3万から2020年の200万へ成長。 |
この表のPVは、ページが閲覧された回数です。自然検索流入は検索エンジンから訪れた流入を指し、資料請求は読者が情報を受け取るために行った行動です。その後の商談や受注には、相談内容、営業対応、商材との適合なども関わります。PVの増加と事業成果は、段階を分けて確認します。
たとえば、記事が多く読まれても、自社の商品を必要としない人ばかりなら、問い合わせの増加には結び付きにくくなります。一方、流入が少なくても、具体的な導入課題を持つ読者に答えられれば、相談につながる可能性があります。事例を読むときは「何倍になったか」だけでなく、「誰の、どの行動が変わったか」まで確認してください。
比較期間も重要です。公開からの経過期間とツール導入後の期間は異なり、サイト全体と特定のメディアでも対象が変わります。制作本数、運用体制、既存記事、導線などを含む取り組みとして捉え、ツールを入れたことだけを変化の原因と決め付けないことが、自社の施策を考える出発点です。
グロービスの事例に見る潜在読者への接触と社内執筆体制

サービスを探す前の悩みから接点をつくる
グロービスの「グロービスキャリアノート」は、20〜30代の若手ビジネスパーソンへ、キャリアや働き方、能力開発に関する情報を届けるメディアです。すでにMBA取得を検討している人だけでなく、将来への不安はあっても、学びや能力開発を解決策として考えていない人との接点をつくる目的がありました。
そこで、大学院の紹介を先に押し出すのではなく、読者の悩みを起点にテーマを考えています。担当者は社内の書籍や社員への聞き取り、自身の経験から検索されそうな言葉を集め、検索需要と自社の知見を活かせるかを確認。そのうえで、検索結果に並ぶ記事が誰を対象にしているかも見ていました。
同じキャリアに関わる言葉でも、人事担当者が制度を整えるための質問と、若手社員が自分の働き方を考える質問では必要な回答が違います。前者へは制度設計や運用、後者へは選択肢や判断の仕方が求められます。テーマが自社の専門分野に近くても、検索者が想定読者と一致するかを確かめる点が、この事例から学べます。
専門家の知見と編集担当の役割を分ける
運営には、日常業務を担う担当者とブランド観点で確認する上長の固定メンバー2名に加え、執筆へ緩やかに参加する社内メンバーがいました。営業や講師など、本業を持つ社員が知見を提供する体制です。固定メンバー2名が、すべての記事を調査から執筆まで担当していたわけではありません。
執筆者には、候補の中から詳しい領域や書きたいテーマを選んでもらい、書きやすさに合わせて構成案の細かさを調整していました。担当者が検索意図を整理し、執筆者の専門性と接続することで、専門家へ「自由に記事を書いてください」と依頼した際の迷いを減らす仕組みになっています。
| 役割 | 担当した内容 |
|---|---|
| 日常の運営担当 | キーワード候補の整理、検索意図の分析、執筆者に合わせた構成設計、SEO観点の確認と公開後の見直し。 |
| 執筆へ参加する社員・講師 | 得意なテーマを選び、構成案に沿って知見を記事へまとめる。本業と並行して参加。 |
| ブランドの確認役 | 大学院が発信する情報として、表現や内容をブランドの観点から確認。 |
公表されたPVの変化と、自社へ応用する条件
2021年4月、メディア公開から1年の時点で、ツール導入から約10カ月のPVが約18倍になったと公表されています。この変化が示すのはページ閲覧の拡大です。当時は、体験クラスの申し込みをCVとし、より軽い行動として資料請求なども検討していました。申込数や自然検索流入が18倍になったという意味には広げられません。
公開後には、成果が出ていない記事のタイトルや構成を見直し、検索順位の変化を執筆者へ共有していました。知見を集めるだけでなく、記事の状態を確かめ、次の執筆へ学びを戻すところまで運営に含めている点が重要です。
たとえば、自社に専門家はいるのに記事が増えない場合、専門家へ構成設計と執筆の全工程を任せると、本業の忙しさや書き方への迷いで止まることがあります。その場合は、編集担当が読者の疑問と構成を用意し、専門家には得意なテーマの選択と具体的な説明を依頼する分担が候補になります。
ただし、この方法には、構成をつくる時間、専門家が協力できる時間、事実や表現を確かめる役割が必要です。社内に知見があるという理由だけで内製化を決めず、どこまでを誰が支えられるかを先に整理してください。
カオナビの事例に見る制作分業とリード獲得導線

指名検索と広告以外の集客経路を育てる
カオナビは、指名検索からのサービスサイトへの流入とリスティング広告が主なリード獲得経路だったところから、新たな接点として「カオナビ人事用語集」に取り組みました。人事やマネジメントに関する疑問へ答えることで、人事担当者や経営層など、サービスに関心を持ち得る読者へ情報を届ける考え方です。
立ち上げ後の課題には、記事制作へ時間がかかることがありました。当時の担当者は1人で、1コンテンツを仕上げるのに1〜2週間かかることもあったと説明しています。必要だったのは、単純に公開本数の目標を増やすことではなく、制作のどこに時間がかかり、どこを分担できるかを見直すことでした。
構成を社内で決め、執筆を分担する
カオナビでは制作工程を分け、得意分野を持つ外部の担当へ業務を依頼しました。一方で、記事の骨子となる構成案は社内で作成しています。見出しだけでなく、各パートで説明する内容や参考文献まで含む指示書を渡し、分業しても記事が答えるべき疑問を共有する方法です。
この分担では、執筆を依頼した後も社内に判断が残ります。検索者が何に困っているか、自社の読者へどこまで説明するか、記事の説明とサービスの関係が自然かは、構成段階から整理する必要があります。作業を分けるときほど、完成記事が答える疑問を共有することが大切です。
また、同じ分野の似た言葉でも、検索する立場や知りたいことが違う場合があります。用語の説明だけで十分なのか、具体的な書き方や制度づくりまで必要なのかを分ければ、外部の執筆者も調査範囲を判断しやすくなります。自社で採用する際も、語句だけを渡すのではなく、想定読者と必要な回答をセットで渡してください。
記事を読んだ後の行動まで設計する
キーワードの優先順位は、検索ボリュームに加えて、カテゴリー、サービスとの親和性、ニーズを踏まえて決めていました。多く読まれそうかだけでなく、読者が自社の見込み客とつながるかを考えた選定です。
さらに、記事からサービスLPやホワイトペーパーのダウンロードページへ進む導線を設け、リンクの数、表示場所、文言を検証していました。記事で疑問を解消した人へ、次に必要な情報を案内する取り組みです。リンクを置くことと、読者がその先へ進めることは分けて考えます。
たとえば、用語を初めて調べている読者には、導入相談よりも業務を理解できる資料が合う場合があります。一方、具体的な製品の対応範囲を調べている読者には、サービスページの説明が役立ちます。自社の導線を考える際は、記事の問いと案内先で得られる情報がつながっているかを確認しましょう。
PVの成長を自社の目標倍率へ置き換えない
公表された人事用語集の月間PVは、2017年の約3万から2020年の200万へ成長しています。これは人事用語集の時点付きの閲覧数であり、そのまま自然検索流入や受注の増加を表す数値ではありません。制作体制、テーマの優先順位、導線の改善を含む運営の変化と合わせて読みます。
この事例を活かしたいのが、記事には流入しているのに資料請求が少ない企業です。まず、読者が必要とする資料を案内しているか、リンクが見つかるか、フォームまで進めるかを確かめます。記事を追加する前に、どこで行動が止まっているかを把握すれば、制作量を増やす以外の改善候補が見えてきます。
自社に合うSEO事例を見分ける条件

自社に近いSEO事例を探すとき、業種の一致は手掛かりになります。ただし、同業でも対象読者や課題が違えば優先する施策は変わります。グロービスのように潜在読者との接点を増やしたいのか、カオナビのように制作と獲得経路を育てたいのかを、先に言葉にしてください。
2社はいずれもコンテンツを中心とする取り組みです。店舗の来店を増やしたい場合や、大規模サイトで重要ページが検索に表示されない場合には、地域との関係や技術的な状態など、別の確認が必要になります。記事制作の成功例を、そのまま全種類のSEO課題への解決策にしないことが重要です。
| 条件 | 2社から読み取れる点 | 自社で確認する事項 |
|---|---|---|
| 読者と課題 | グロービスは若手のキャリア課題、カオナビは人事・マネジメントの情報ニーズに対応。 | 誰が何を知りたくて検索するか。その疑問と自社の提供価値がつながるか。 |
| 知見・既存資産 | 社内の専門知識や、人事領域の用語を解説する記事を活用。 | 独自に説明できる知見と、改善に使える既存記事があるか。 |
| 制作・確認の体制 | 社内執筆を支える編集と確認、社内構成と外部執筆の分担。 | 構成、知見提供、執筆、事実確認、修正の責任者と作業時間を確保できるか。 |
| 指標・期間 | PVの対象と比較時点を限定し、公開後にも改善。 | 対象ページ、事前値、資料請求などの成果定義、見直し時期を決められるか。 |
この照合で不足が見つかったら、事例を諦める前に、どの条件を整えれば一部を試せるかを考えます。社内執筆の時間が取りにくければ、知見の提供と原稿確認を社内に残し、執筆を分担する方法も候補です。一方、外部へ依頼する準備ができていなければ、先に読者と構成の判断を整理する必要があります。
公表されていない人員や予算を、PVの大きさから逆算することはできません。自社で用意できる作業時間、依頼費用、CMSの編集権限、確認にかかる日数を確認し、実施可能な範囲を決めてください。成果倍率より、課題と実行条件の近さを優先して読むと、無理な目標を避けながら施策へ落とし込めます。
| 自社の状況 | 優先する確認・施策 | 優先度の考え方 |
|---|---|---|
| 重要ページが検索に出ない・成果を計測できない | 検索表示や計測の状態を確認し、不備を直す。 | 最優先。記事追加や導線変更を評価する前提を整える。 |
| 専門家はいるが記事化が進まない | 読者の疑問を整理し、構成と知見提供・執筆の分担を決める。 | 優先候補。グロービスの編集と執筆の受け渡しが手掛かり。 |
| 制作が特定の担当者に集中する | 工程ごとの作業時間を把握し、構成と執筆などの分業を検討。 | 優先候補。カオナビの制作分担と指示書が手掛かり。 |
| 記事への流入はあるが資料請求が少ない | 記事と資料の一致、リンククリック、フォーム到達・完了を確認。 | 記事の追加前に検討。行動が止まる箇所から改善する。 |
事例から施策を選び変化を確かめる方法

対象ページと施策前の状態を残す
事例を自社施策へ変えるときは、「SEOを強化する」よりも具体的な課題を決めます。「専門家の知見が記事にならない」「記事を読んでも資料ページへ進まない」のように、困っている場面を絞ると、誰が何を変えるかを決めやすくなります。
次に、対象ページや記事群、狙う読者、施策前の状態を残します。制作体制を変える場合は、構成、執筆、確認のどこで止まるかと作業時間を記録します。導線を変える場合は、記事への流入、リンククリック、フォーム到達、送信完了を分けて確認します。計測されていない段階があれば、比較できる状態を整えてから変更を評価してください。
知見の活用と導線改善で、試す内容を分ける
たとえば、専門家の協力は得られるが執筆が進まない企業と、流入はあるが資料請求が少ない企業では、次のように記入内容を変えます。前者はグロービスの編集と執筆の分担、後者はカオナビの導線検証を手掛かりにした、自社で試すための例です。
| 課題 | 施策と担当 | 確認する指標と判断 |
|---|---|---|
| 専門家の知見を記事化できない場合 | 編集担当が読者の問いと構成を用意。専門家が知見を提供し、原稿を確認する。 | 構成・確認に要した時間、公開できた記事、検索表示とクリックを確認。滞留した工程を次回の分担に反映する。 |
| 記事から資料請求へ進まない場合 | 記事担当が資料との内容一致を確認し、編集・制作担当がリンクの場所や文言を見直す。 | クリック、フォーム到達、送信完了を分ける。クリック後に止まるなら、案内先やフォームを次の確認対象にする。 |
制作体制の改善では、作業時間が短くなったかだけで判断しません。確認の負担を専門家へ移しただけになっていないか、読者の疑問へ十分に答えられているかも見ます。公開後は検索表示やクリックを追い、構成段階で想定した読者に届く内容になっているかを確かめてください。
導線改善では、クリックが増えても送信完了が増えていないなら、成果につながるまでの別の箇所を確認します。記事の案内と資料の内容が違っていないか、フォームが使いにくくないか、必要以上の入力を求めていないかなどが確認候補です。資料請求後の商談化も見れば、件数だけでなく、事業との適合を評価しやすくなります。
期間と同時変更を記録し、次の判断につなげる
公開や変更の日付、対象ページ、変更内容、確認する時期を残します。広告の出稿、季節による需要の増減、サイトの改修なども記録すると、SEO施策以外の影響を考えやすくなります。前後で数値が変わっただけでは、特定の変更が原因とは言い切れません。可能な範囲で変更の対象と時期を分けて確認しましょう。
成果が出る時期は一律に決められません。公開できたか、検索に表示されるか、読者が訪れるか、次の行動が生まれるかを段階ごとに見ます。表示されていないなら検索の対象になる状態やページの内容を、流入後に止まるなら案内先と導線を確認するなど、止まっている段階に合わせて次の施策を選びます。
自社で試す施策は、担当・対象・確認指標まで決めて初めて検証できます。2社と同じ規模を目標にするより、まず自社の条件で改善できる範囲を見つけ、得られた結果を次の判断へ戻すことが大切です。
支援を検討するときは、自社に残す判断を整理する
社内だけで進めるのが難しい場合は、課題、対象ページ、事前の数値、社内で担える役割、依頼したい作業を整理して相談すると、必要な支援を検討しやすくなります。たとえば、顧客理解や専門知識の確認を社内に残し、調査や構成設計、執筆、改善のどこを依頼するかを考えます。
トミラへの相談を検討する際も、この整理をもとに、調査・制作・内部リンクの改善などのうち自社に必要な支援範囲を確認できます。支援内容と資料は、次のサービス紹介から確認してください。
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